« 中長期的ビジョンについて考えた | トップページ | 2009年の目標 »

2009年1月11日 (日)

つくばチャレンジ2008シンポジウム講演メモ

<< つくばチャレンジ2008シンポジウム講演メモ >>

日時    2009年 1月10日(土)    10:30 - 17:30
場所    (株)バンダイナムコゲームス未来研究所

 午前中に基調講演と完走したヤマハ発動機チームの講演があり、午後にポスターセッションと2009年度のつくばチャレンジについて説明があった。

■ 基調講演(筑波大 油田先生)

 2008年から参加した人に向けて、つくばチャレンジの狙いを説明。(この部分は去年と同じなので省略。)アマチュアは楽しむことを大切にして、プロにはできないチャレンジをしてくれることを期待しているとのこと。2008年はウィークデイに開催したが、2009年は11/20(金)、21(土)に開催する予定。
 安全性の確保について。安全性は人間とロボットが共存する上で最重要なコンセプト。ロボットの大きさ、重さについては現在のレギュレーションで特に問題無いと思っているが、小さすぎるロボットは自転車に乗っている人から認識されにくく、危ないこともわかったので、この部分は参加者から意見を募ってどうするか決めたい。オペレータの随伴は出来ればやめたいのだが、今のロボット技術はそこまで達していない。人間はロボットをよけてくれるが、ロボットはロボットをよけてくれるという確証がないので2008年は左側走行ルールを導入した。しかし、まだまだ経験不足であり、2008年度はオペレータが関与することにした。
 2007年はエントリーが33チーム、トライアル突破が11チーム、1km完走が3チーム。2008年はエントリーが50チーム、トライアル参加が47チーム、トライアル突破が22チーム、1km完走が1チームであった。冷やかしで参加登録されると事務局が管理しきれなくなるので2008年は登録料を1万円にしたが、それでも50チームも登録していただいた。50チームの内訳は次の通り。
 大学(研究室)    26 ?
 大学(サークル)    5  ?
 高校            1  ?
 企業            8  ?
 個人・グループ    10 ?

 道路使用許可について。ロボット特区が全国展開され、ロボットの公道実験に許可がおりやすくなった。法的にロボットが公道を走ることについて考えると、電動車いすはOK、セニアカーはOK、自転車はOK、バイクはNG。ラジコンカーはNGではない。法的には柔軟に運用できるようになっているが、これは法というよりは地域社会から理解が得られるかどうかという問題。つくばチャレンジを通してロボットが公道を走行することに対する地域の理解を得られることを期待している。

--- 完走チームによる発表 -----------
■ ヤマハ発動機 藤本さん

 つくばチャレンジ参加の経緯について。2007年に大会関係者から参加を勧められたが個人参加は厳しいと考え、会社を巻き込むことにした。仕事ではないのでメンバー集めから始め、集まったところで会社に参加することの価値を訴求して支援を相談した。その結果、非専業の会社の業務として参加することを認めてもらった。もちろん、今までの業務は延滞なく行うという条件。業務なので査定の対象であり、リタイヤしたら全員丸坊主という約束だった。会社に提示した大会参加の価値は (1) 技術力向上、(2) 社員のモチベーション向上とベンチマーキング、(3) 社内外の技術者とのネットワーク作り、(4) 学生に対するヤマハ発動機の知名度向上、など。
 結果について。トライアルは1回目でクリアした。走行時間は2分12秒なので平均速度は2.7km/hくらい。目標速度はレギュレーション上限の4km/hを0.8掛けして 3km/h にしたので、大体目標速度通り走った。本走行は25分50秒くらいで完走。平均速度は2.3km/hくらいだった。本走行ではUターンする場所が一番技術的に難しいところと考え、走行速度をかなり落としてターンさせた。ゴールラインを越えてから停止してはじめて完走なので、停止するまでドキドキしていた。
 車両について。ベースはヤマハ発動機の製品であるJWアクティブという電動車いす。センサはGPS(ヘミスフィア R110)、IMU(東京計器 VSAS-2GM)、LRF(北陽電機 UTM-30LX)という構成。IMUでロボットの姿勢と走行速度を計測した。JWアクティブの製品としての安全性や長所を生かすよう、コントローラはジョイスティック操作を乗っ取るだけというシンプルな構成にした。
 制御システムについて。経路追従は実コースの計測で得られたデータをもとにウェイポイントを設定し、そのウェイポイントを目標にしてLOS(Line Of Sight)によって制御量を求めた。モデルベース開発を行い、Matlab/Simlinkで設計・検証したモデルをMicroAutoBoxで動かした。モデルベース開発は最近自動車業界で注目されている開発手法。
 考察。コース上の難所としてA:図書館前(GPSが入りにくい、自転車など)、B:歩道橋(IMUが乱れる。地磁気のせい?)、C:ホテル前 を想定した。対策としてEKF、誤差を考慮した経路設定、低速走行を導入した。GPSの入り具合は思ったより良かった。完走できた要因は、新しい技術を使うことよりはシステムインテグレートに重点をおいたこと、プラットフォームの信頼性が高かったこと、業務ですでに今回使ったセンサを扱っておりセンサ特性を熟知していたこと、確立された制御手法を用いたことによる。
 ふり返り。会社にとって参加する価値はあったか? 社内外のネットワークができ、新聞、TV、ウェブ媒体でも取り上げてもらい、知名度も上がったものと思う。就職活動する学生にヤマハ発動機をアピールできた。開発に一番時間を費やしたのは作り込みの部分であり、EKFのパラメータチューニングには時間を費やした。参加して得られたものは、「達成感」。しかし、最大の効果はこれからで、リクルート活動で効果が現れるものと期待している。すでに工場見学の希望も出始めている。

(質疑)
Q:試走会で1回しか完走できなかったものをどうやって本走行で完走できるようにもっていったのか?
A:ホテルに帰ってからメンバーで議論し、最も確実な方法を選んだ。先ほどの発表では「完走した要因は信頼性」と言ったが、その部分は博打的だった。

Q:先ほど難所対策としてカルマンフィルタを挙げていたが、はカルマンフィルタだけでは対策になっていないですよね?
A:そのとおり。Uターンする場所では極力走行速度を落とす、障害物回避より経路追従を優先する、障害物はギリギリで回避する、狭い場所ではコースの中央を通る、など総合的な対策をとった。しかし、GPSの精度が十分出ていたので助かった面もある。

Q:自己位置推定の精度は?
A:GPSの精度でいえば±50cm。オドメトリが思ったより良かった。自己位置推定の精度について数値的な検証は行っていない。

--- 完走チームによる発表 ここまで-----------

午後のポスターセッションについては数が多く、回りきれなかったため、本走行終了後のエキジビジョンで完走した産総研チームのみ紹介する。

■ P-32 産総研、北陽電機ジョイントチーム

 基本戦略は、マニュアル走行でコースデータを集めておき、これを参照経路として自律走行するというもの。参照データの実体はロボットの座標と、その座標で計測したセンサ群のデータ。センサはGPS、エンコーダ、光ファイバジャイロ、LRFを使用した。
 自己位置推定の誤差を修正するために、線形ランドマークを利用した。線形ランドマークとはLRFの計測データから得た長い直線のこと。1スキャン分の点郡から1m以上の直線を探し、現在位置から最も近い参照経路上で計測された線形ランドマークとの見え方の差を用いて自己位置推定の誤差を修正した。自己位置推定や障害物回避の完成度は高いものと自負している。
 本走行で完走できなかった理由は、走行開始前のステアリング初期化に何らかの問題があり、ステアリング角度の計測結果にオフセットが生じてしまったことによる。ステアリングをまっすぐにしたつもりでもやや曲がってしまい、走行がふらつき、右には大きく曲がれても左にはあまり曲がれなくなった。初めてでたトラブルであり、その後も再発していないので、なぜそういうことが生じたのかわかっていない。2007年の反省からギャラリーが沢山いても走行に支障がないよう設計した。

■ つくばチャレンジ2009について(筑波大 油田先生)

 2009年度もやります。開催日は2009年11月20日(金)、21日(土)。もっとバリエーションのあるコースを狙って、場所は中央公園内の遊歩道や車道脇の歩道、芝生、橋を渡るなどを予定している。この背景にはつくばセンター周辺は2009年に工事があるためそちらを使えないという理由もある。中央公園の芝生では日曜日にフリーマーケットが開催されたりするが、これは調整が可能そう。公園の中にある木は落葉樹ではないので、冬でも葉っぱがあります。また、コースは狭い場所、広い場所ができ、ロボット同士がすれ違うシーンは少なくなる。コース長は 1kmプラスアルファになるだろう。トライアルは今までよりもう少し難しくするかもしれない。4月くらいまでにちゃんとコースを決めて公表する予定。

(質疑)
Q:コース内の段差は?
A:最も大きな窪みで幅が5cmくらい。これはつくば市のほうでチャレンジまでに土を入れてくれますよね。(と、お願い。)

Q:何台くらい完走できそう?
A:100台エントリーするとして、3分の2がトライアルを突破、さらにその2分の1くらいは完走してほしい。コース的にはそれほど難しくないはず。完走できないコース設定をするつもりはない。ただし、全部GPSで走るのは難しいだろう。コース上の場所に応じて手段を切り替える必要があるかもしれない。

Q:トライアルの場所は変わる?
A:スタート地点から100mとしておくのが、参加者にとって親切だと思っている。

Q:車道脇の歩道や橋を渡ることに対する安全性は? ロボットが池に落ちたりしない?
A:観客からすればゴール直前で池に落ちた方が面白い。が、公園自体、小さな子供を遊ばせておいても池に落ちないように作ってあるので、よほど勢いよく突っ込まない限り池に落ちることはないと思う。車道脇の歩道には柵がある。

Q:サイズ等、レギュレーションの変更は?
A:ロボットの大きさが小さすぎると自転車が気付かないことがわかったので、大きさの下限については参加者の意見を聞いた上でレギュレーションを決めたい。

« 中長期的ビジョンについて考えた | トップページ | 2009年の目標 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/167990/43702460

この記事へのトラックバック一覧です: つくばチャレンジ2008シンポジウム講演メモ:

« 中長期的ビジョンについて考えた | トップページ | 2009年の目標 »

最近の写真